新年のご挨拶と2017極私的舞台鑑賞記

皆さま

あけましておめでとうございます。

今年は、ここ数年にないほど穏やかな気持ちで新年を迎えることができております。
感謝と胸のうちに秘めた想いと共に、今年も歩んでまいりたいと思います。
 
さて、毎年お約束、かつ、このネタでのみブログを更新している、恒例の舞台鑑賞記、お送りさせていただきます。
と書きながら、手帳を基に記憶を辿ると、鑑賞数もかなり少なく、おまけに例年にない不作ぶりで、不満や怒りを通り越して「お金返して」というようなものが多く、その中でベスト3を選ぶのはなかなか難しいものがありました。

第3位 フィオレンツァ・チェドリンス・リサイタル (7月3日 武蔵野市民文化会館小ホール)
かつては新国立劇場の公演で頻繁に来日していたイタリアの名花、久々の来日リサイタル。
最近、世界の檜舞台でもあまり名前を聞かなくなっていたが、ほとんど声の衰えも感じられず、往年の美声と細やかな感情表現は健在であった。
ノルマやフォヴァリアータのベルカント物からヴェルディ、プッチーニ、ヴェリズモまで幅広いレパートリーをうたったが、やはり彼女の本領はプッチーニ、ヴェリズモ。特に、アドリアーナ・ルクブルールのヒロイン登場のアリア、美しい容姿も相まって、一瞬にして女優アドリアーナが舞台に登場した。彼女のように往年のイタリアのプリマドンナらしいエレガントなソプラノ、他にあまりいないと思うので、トスカ、アドリアーナ、マノン・レスコー辺り、来日して歌ってもらいたい。

第2位 ドニゼッティ「ルチア」(3月26日 新国立劇場)
新国立劇場では珍しいベルカント物の新演出の舞台。
ルチアと言えば、ヒロインの出来いかんに成否がかかるといっても過言ではないが、ロシアの新鋭、オルガ・ペトレツェッコがかつてペーザロで聞いたひ弱な歌からすっかり脱却して、テクニック、表現共にまずまず聴きごたえある歌唱を聴かせてくれた。彼女の本分はルチアではなくてやはりロッシーニにあると思うし、ルチアにしては表現が少し明る過ぎてやや物足りないが、容姿も美しく、なかなか魅力的なルチアであった。エドガルドのジョルディのノーブルな歌唱と舞台姿、エンリーコのルチンスキーの高慢さが滲み出た歌唱、と他の主役級のキャストも揃っていた。
グリンダの演出は、プロジェクターを使用した映像が斬新だった一方で、舞台自体は演技も含め非常にオーソドックスで陰惨な中世のスコットランドの雰囲気を十二分に伝える優れたものであった。

第1位 ワーグナー「ジークフリート」(6月17日 新国立劇場)
飯守監督の渾身の指輪四部作の最後を飾った神々の黄昏を所用で行けなくなったため、ジークフリートを今年のベストに挙げたい。
フィンランド国立歌劇場からレンタルしてきた故ゲッツ・フリードリッヒの演出は、今や古色蒼然としていて、大蛇とジークフリートの対決のシーンをはじめ、もう失笑するしかないというレベルであったが、その一方で飯守監督のインテンポで引き出すオーケストラのうねりに、グールド、グリムスレイ、コンラッド、メルベート等の粒ぞろいの世界的歌い手が絶唱で応えていた。

今年が皆さまにとって良い一年となりますように。