極私的舞台2015ベスト3

皆さま、あけましておめでとうございます。

昨年は大晦日ギリギリまで事務所の作業等に追われる状態で、自宅の部屋の片づけ等が全く手つかずのまま年明けを迎える始末になりました。元旦、家族で行う恒例の行事を済ませ、日帰り温泉に出掛けて、ようやく一息つけました。というわけで、三が日は年明け早々部屋の片づけ等をして過ごすことになりそうです。

さて、もはや一年に一回、しかも、舞台観劇記しか更新しない、このブログですが、これを楽しみにされているごく少数のお客様、友人もいるようなので、今年も書かせていただきます。

昨年は、私の長い長い舞台鑑賞歴において信じられない出来事がありました。11月に大好きなトスカを新国立劇場で鑑賞していたところ、とにかく音楽を聴いているのが耳障りでしんどいという気持ちになったのです。演奏が悪かったわけではありません。シーリのトスカはまだ粗削りなところは散見されるものの将来楽しみなヒロインぶりでしたし、他の歌手も水準以上、舞台も極めてオーソドックスな舞台で、視覚的にも美しいものでした。確かにオケが鳴り過ぎな印象はありましたが、それにしてもオペラを見聞きしていて、苦痛に感じるというのは初めての出来事でした。この話を親友の出版社の友人に話したところ、「普段負荷の相当かかる仕事をしているから、感情がダイレクトに伝わるオペラ等を身体が受け付けないようになったんじゃないか」との指摘を受けました。私自身はあまり意識はしていませんでしたが、加齢と環境がそのような心境に追い込んだことには若干心当たりがありました。いずれにしても、今年は心身を健全に保ちつつ、常に新鮮な感覚を忘れずに物事に取り組んでいきたいと思います。話を元に戻しますが、一昨年以上に舞台に出掛ける機会は減っていたようで、その中で一応ベスト3をあげたいと思います。

第3位 ヴィヴァルディ「メッセニナの信託」(3月1日、神奈川県立音楽堂)

日本では上演が稀なバロックオペラの、しかも世界水準での舞台上演。ビオンディが振るエウローパ・ガランテがオケに入るというだけでも上演の成功は約束されたようなものだが、実際はそれ以上。人間の喜怒哀楽が驚くほどリアルに耳に突き刺さり、3時間半の決して短いとは言えない上演があっという間。当代きってのバロックの世界的歌い手の歌唱も聴きごたえがあったが、中でもユリア・レージネヴァは出色の出来栄え。彌勒忠史の演出も狭い舞台空間を効果的に活かし、まるで能舞台を見ているかのような美しいモダンな舞台を作り出していて、非常にセンスが良かった。これと対比する訳ではないが、10月8日に紀尾井ホールで上演されたペルゴレージ「オリンピアーデ」も珍しいバロックオペラの貴重な上演で、林美智子をはじめとする日本人歌手も大健闘していたが、某演出家の凡庸な棒立ち演出がすべてぶち壊していた。

第2位 ヴェルディ「椿姫」(5月16日、新国立劇場)

私が偏愛し、ヴィオレッタのパートはほとんど諳んじているくらい個人的にも思い入れのある役だが、生の舞台ではほとんど満足したことがない難しいオペラ。ベルナルダ・ボブロのヒロインは、決して美声ではなく、声量はやや乏しいし、技術的にも十全とは言えないので、いわゆるプリマドンナ然としたヒロインを期待する向きには全く受けないと思う。しかし、彼女の体当たりの役作り、ひたむきな真摯な歌いぶりには、ヒロインが必死に血反吐を吐きながら生きている切実さが確かに感じられ、また、彼女の声量がやや乏しい故、聞いている方も意識して歌声を聞き取ろうとせざるを得ないこともあり、とにかく私はこのオペラの生の舞台で初めて涙した。最近、加齢もあるのか、こういう歌手・演者のタイプに涙もろくなっているだけなのかもしれないが・・・。イブ・アベルの指揮も緩急豊かで、タンタカタンタカという定型的な音にも意味があることを感じさせる優れたもので、ボブロを支えていた。映画監督出身というプサールの演出は、舞台床まで鏡を使い視覚的には若干煩わしいところはあったが、写実的でセンスの良いものであった。

第1位 愛の伝説 (11月27日 東京文化会館,マリンスキーバレエ来日公演)

グリゴロービィチの珍しい演目の国外初上演。ソ連時代の愛国物という演目の内容には少し古めかしさを感じるが、オリエンタルな音楽、シンプルでありながら目を凝らしていると豊かな感情表現が感じ取られる象形文字のような振付、そしてグリゴロらしいダイナミックな男性群舞、と個人的には非常に楽しめるバレエであった。ソリストはいずれも高水準で各々の役に良く合っていたが、やはり衰えたりとはいえ、ロパートキナのバヌーが出色。嫉妬とか怒りとか女性の嫌な部分を積極的に表現する必要がある役だが、あまり従来彼女の演じる役では見たことのないような強い役作りが印象的だった。ただ、別演目のジュエルズでも感じだが、バレエ団のコールドのレベルが驚くほど下がっていて、有名どころ以外のソリストのレベルも今一つだったことも含め、今後が少し心配になった。

今年も皆さまにとって良い一年となりますように。

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